
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Stories 6 (ストーリーズ 6)
How did "CBM" get its start? (CBMはいかにして誕生したか?)
Stories 6 - 19 セクション 19 Dig It! XCQ - 1
( 謎めいたブートレッグ「Dig It!」 )
セクション18 においては、RIで始まるナンバーで確認できている最も古いナンバーのブートレッグ、RI-3047の 「CSN&Y – Wooden Nickel」 について触れ、そのマトリックスからさらに関連性のあるブートレッグ 「Rolling Stones – Stoned Alive」と「TIT TAT」盤の3枚を紹介し、それらとCBMとの関連性について考えてみた。
そのプロセスでマトリックス「XCQ-1」のブートレッグ「Dig It!」の存在についても言及したが、このセクションではその「Dig It!」についてさらに深堀してみたい。
既に「Dig It!」の詳細データはlivedoorブログへエントリー(→GET47)したので参考にしていただきたいが、このブートレッグは70~80年代においてはあまり知られておらず、謎めいたブートレッグであった。
80年代に発売された「You Can't Do That」であるとか「ビートルズ海賊盤事典」には掲載されていない。2007年のJohn C. Winn著「BEATLEGMANIA VOLUME TWO」にこのDig It ともう一つのDig IT!が掲載された頃からファンの間では認知されるようになった。

マトリックスは「XCQ-1A A-HAHA / XCQ-1B B-HoHo」、このXCQが意味するものは何かわからないが、前セクションで紹介したように、「XQC-2」と「XCQ-4」というマトリックスのブートレッグがあることから何かの関連性を示唆している。
「XQC-2」の「Stoned Alive」の特徴は 前セクション を参照してほしい、「XCQ-4」は セクション11 でリストしたタイトル「Jimi Hendrix Experience / Eric Clapton - Ginger Baker, John Mayall - Jack Bruce」であるが、CBM名義でもリイシューされているため、追加の写真を以下にリストする。
↓写真:CBM盤「Jimi Hendrix Experience / Eric Clapton - Ginger Baker, John Mayall - Jack Bruce」 上段はカラーでプレスされ、「MUNIA」というレーベル名。中段はリイシュー・プレス、レーベルにはContra Band Musicのマーク。下段はセクション11でも取り上げたミメオグラフ印刷がカバーにあるタイプ。このタイプだけはフロント・カバー・スタンプのロゴが異なっている。なおマトリックスはすべて同じ。(下段のディスク・レーベルは中段右に示したグリーンのもの)

↓写真:話は脱線してしまうが、上記CBM盤のレッド・カバー盤はWCFによるFAKE盤(707)が作られた。(写真下)スタンプ・ロゴは微妙に異なり、マトリックス、レーベルも違う。音質はCBM盤からのコピーである。またWCF盤にも複数種類見つかっており、レーベルに「707」のレコード番号表示があるものもある。

この「XCQ-4」は前セクションにおいてリストしたタイトルと共通点は多い。その上、ミメオグラフ印刷のカバーも見つかっている。1970年の前半にCBMが制作したものと断定してよいだろう。
ところが一方「Dig It!」に関していうと、マトリックスに「XCQ-1」とある共通点だけでそれ以外は、これといって似た特徴が無いのも事実である。
特にディスク・レーベルの形状は異なっており、2ステップ・タイプではあるものの、内円が29.0mm、外円が74.0mmあり、よくあるCBMの2ステップ・タイプ(内円が29.0mm、外円が70.0mm)とは一致していない。
そして謎めいているのはその収録内容である。
Dig It!に収録されている全10トラック中、B4に収録された「Dig It!」を除いた9トラックは、西海岸で制作されたブートレッグ「GB」(→GET46)と同じマスターを使用している。

しかし、「GB」(→GET46)がステレオで収録されてあることに対し「Dig It!」はモノラル収録であるため、これまで「Dig It!」は「GB」からのコピー盤と認識されてきたようである。
ところが、トラックによっては曲の前後において「Dig It!」の方が明らかに長く収録されているケースがいくつか見つかっている。ということは少なくとも「Dig It!」は「GB」からのコピーではないのである。
このケース、かなり意外と言えるだろう。1970年の前半という時期に同じマスターを使用したブートレッグが東海岸と西海岸でそれぞれ制作されたケースは極めて稀である。
セクション17 で紹介した、CBMとTMOQの結びつきは1973年以降であった。ただ、そのTMOQのK氏も1972年にWizardoからの紹介によってCBMと結びついた。
ひょっとすると、CBMと西海岸ブートレッガーは1970年春頃から既に交流があり、そのつながりによってK氏へと広がったのかもしれない。もしそうだとすると1970年の「Shea the good old days」の件(参照→セクション11)も大いに関係してくるであろう。
ただ、手掛かりは少ない。「Dig It!」と「GB」はその音質の悪さからか、再度プレスされることは両方ともなかった。また、「XQC-2」と「XCQ-4」にはディスク・レーベルの形状とマトリックスの「サイン」(?)めいたものに共通点があったが、「Dig It!」にはそれらの特徴がない。
特にディスク・レーベルの形状が異なるということは、そもそも別ブートレッガーによって、別のプラントでプレスされた可能性もあるため、私は当初、「Dig It!」とCBMにはつながりがないとも考えたのである。
しかし、どうもひっかかるものがあり、再度調べなおすことを考えた。
というのもCBMを考えた時に、どうしても調べる対象となるタイトルは1971年から1973年までのタイトルが多く、必然的に、1971~73年のレコードばかり偏ってチェックしていたのである。
そこでRIのプラントに関し、1960年代までさかのぼって、再度ディスク・レーベルの形状を調べなおしたところ、前述の「内円が29.0mm、外円が74.0mm」のタイプがいくつか見つかったのである。
それはおよそ1968年から1970年の前半までのタイトルに限定され、それ相当の量発見できた。
その結果を簡単にまとめると、1968年~1970年前半までは「内円が29.0mm、外円が74.0mm」のタイプと「内円が29.0mm、外円が70.0mm」のタイプが混在している。そして1970年後半ごろより「内円が29.0mm、外円が74.0mm」のタイプは姿を消し、「内円が29.0mm、外円が70.0mm」のタイプがほとんどとなる。
1971年以降になると、「内円が29.0mm、外円が70.0mm」のタイプと共に「内円が23.0mm、外円が70.0mm」のタイプが登場し、その後この2つのタイプでプレスされ続けたようだ。
ちなみに、1967年以前のプレスでは「直径70.0mmの円形ステップのみ」のタイプが多数あった。
以下、発見できた「内円が29.0mm、外円が74.0mm」のタイプのプレスをまとめた。
RIのプラントでプレスされた「内円が29.0mm、外円が74.0mmタイプ」の正規レコード

↑写真:「RIS-2801」という番号のレコードだが、Discogsのウェブ・サイトではRIプラントでプレスされたものとしてカテゴライズしてある。確かに1968年頃のプレスを調べると、マトリックスがRIS- で始まっていても、レコード番号表示が RI- のケースもあり、おそらくはプラント側で何かを識別するためだけに「S」が付与されたものだと推察する。このレコードは1969年前半頃のプレス、この3ケースの中では最もディスク・レーベルの形状が「Dig It!」のそれと似ている。

↑写真:この「RI-2806」はボルチモアのラジオ局「KAT」が制作した、番組サンプルを収録したデモ・レコード。1969年前半のプレスと思われ、当時、人気のあった番組が一部収録されており、各地ラジオ局に送られプロモーションとして使用されたようだ。こちらのレーベル形状も「Dig It!」のそれとほぼ同一である。

↑写真:こちらは1970年にプレスされた「RI-3059」という番号のレコード。マトリックスには前セクションで言及したサインのような文字も見られる。上記2ケースと比較すると「Dig It!」とは形状が少し異なるように見えるが、外円は74.0mm直径である。
となると「Dig It!」はスタンパーの作成は別のプラントで制作された可能性はあるが、プレスはRIで行った可能性が高い。ましてやマトリックスに「XCQ」とあるわけでCBMとの関連はかなり高い可能性であり得るだろう。そして 1970年春のプレスと断定できたRI 3047 と比較した場合、ディスク・レーベルの形状から RI 3047 よりも時期的に早かった可能性もあり、ひょっとすると「Dig It!」がCBMによる最初のブートレッグかもしれないのだ。
さて、今までのすべてのセクションで提示した事実と、前セクションと、このセクションでの「CBMは実は1970年春頃から始動していた」という事実を関連付けて考えたらどうなるだろうか?
また、前述の「GB」との関係を考慮すると、1970年前半(2月から5月頃)に東海岸でCBMによる「Dig It!」と西海岸で「GB」が同一マスター・テープを使用して制作されたということは、この時点でCBMと西海岸ブートレッガーを結びつける人物がいたことになる。
今まで提示してきたタイトルの事実、「S-2142」のGet Back To Toronto そして「S-2315」のShea the good old days、Don'tPass Me By、さらに「確たる証拠」(参照→セクション13 / セクション15)の1971年に発売されていたCBMのタイトル、そして「XQC」と「XCQ」、これらを次のセクションでは、時系列で並べ考えるとどのようなことになるか?
私はここまで各セクションのエビデンスを単純にピック・アップし提示してきた。しかし、次のセクションでは、これらの事実を時系列で並べ、あえて今まで出してこなかった西海岸のブートレッガーの名称を入れ整理することにする。