
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Stories 6 (ストーリーズ 6)
How did "CBM" get its start? (CBMはいかにして誕生したか?)
Stories 6-13 セクション 13 Absolute Proof Part.1 (確たる証拠 その1)
1970年代初めのブートレッグが出回り始めたころ、ブートレッグ・ファンは大勢いたが、その「メーカー(製作者)」についてまで考えることはなかった。1970年代中頃になって、カナダでブートレッグの総合的なレビュー本「Hot Wacks」が作られた。そこには様々な「メーカー」(=ブートレッガー)のロゴ・マークと、判明しているものについてはカタログ・ナンバーが掲載された。
1985年の「ビートルズ海賊盤辞典」(講談社)にはブートレッガーについて説明するページがあり、メジャー・ブートレッガーについては簡単な説明が掲載された、この頃からファンは「TMOQ」「CBM」「WIZARDO」といったブートレッガー名に言及するようになり、「TobeMilo」や「Melvin」といったコアなファンをもつレーベルにも注目が集まった。
「CBM」は初期から活動していたブートレッガーでありメジャーであった。しかし一方で、「TMOQ」や「WIZARDO」のように明確なカタログ・ナンバーが無かったことと、東海岸のブートレッガーそのものが紹介されることが少なく、情報は乏しかった。クリント・ヘイリンの「BOOTLEG」に代表されるようにCBMの活動に関しては「1970年代初頭」といった断定しない書き方をするケースが多かった。要は、詳細不明であったということを物語っている。
しかし、前述のビートルズ海賊盤辞典では、その活動開始は1972年と書き表したように、海外の情報サイトなどでも、「CBMは1972年からの活動」とするのが通説になっていった。
とりわけ、ビートルズ名義のブートレッグに関して言えば、「Don't Pass Me By」の名が必ず挙げられ、1972年という年を起点としていた。
しかし、真実は異なっていたようである。少なくともCBMは1971年夏の時点でいくつものタイトルを販売していた。
ここに「確たる証拠」を明示するとともにその解説を行っていく。
下の写真はバージニア州で発行されている新聞、Daily Press 紙の1971年8月19日と9月3日付の紙面に掲載された、とあるショッピング・センターの広告である。

←写真:バージニア州で発行されている「Daily Press」紙
①の日付はその上方矢印(Zoom)の通り1971年8月19日
その下方には「JUNIOR WORLD」というショッピング・センターの広告が掲載されている。
さらにその下方には②の箇所、Zoomを見ていただければわかるが、その内容はブートレッグの販売である。
③は同じ1971年のDaily Press紙、日付は9月3日。
その下は掲載された、同じショッピング・センターの広告。
その広告には新着アルバムとして、バングラデッシュのコンサート、「Madison Square Garden August 1, 1971」が掲載されている。
この広告の内容は、「Junior World」という若者(学生)向けの衣料品、日用品、雑貨を扱ったチェーンのショッピング・センターがヴァージニア州ニューポート・ニューズのハイデン・ウッドに新たに進出、オープンするという内容の広告である。そしてその広告の下の方には格安セールするブートレッグが掲載されている。(→ ②)
それは次のように書かれている。
「Albums! Opening special - while they last」「you know the the sounds of these sides but you won't believe the prices」(「オープニング・スペシャル価格のアルバムです!在庫限り」「ご存じのサウンドです、しかしその価格に驚かれることでしょう」)
そこには4つのタイトルのレコードと価格が記されている。
Carole King - "California Concert"………………………………$1.99
Cat Stevence - "Catnip"……………………………………………$1.99
Neil Young - "Young Man's fancy"………………………………$1.99
James Taylor and Carole King 3-record set-"A King And Two James"…………$4.99
さらに同紙の9月3日の同マーケットの広告では新入荷としてバングラディッシュのコンサート収録ブートレッグが「George harrison, Bob dylan, Ringo starr, Leon russell / Madison Square Garden august, 1, 1971・・・$2.99」
と掲載されている。(→ ③)
CatnipやMadison Square GardenでのコンサートはCBMのみならず、複数の別ブートレッガーによってもプレスされている。そのためこれらのタイトルがすべてCBMによるものかどうか検証が必要であることは当然だが、これら5タイトルが並んで掲載されていること、そして何よりもこの販売がCBMの拠点であったバージニア州ノーフォーク近辺であることを念頭においていただきたい。
また、タイトルによってはリイシューを含めた複数のバリエーションがあるものがある。これらのレコードが本当に、当時CBMによってプレスされたものであるのかという点と、そうであるならば、この広告が掲載された1971年8月~9月時点ではどのプレスであるかについても絞り込みたいと思う。なお、通し番号CBM①~④は(→こちら)にすでにリストしてあるので併せて参照していただきたい。
CBM-⑤ Carole King - "California Concert" マトリックス:RI 3274 A/B
これはCBMがプレスしたブートレッグを指していることに間違いない。なぜならこのタイトルのブートレッグは他にはないからである。同時期(1971年春から夏)に西海岸では「Fit For A King」というタイトルの同内容ブートレッグが出回った。1971年5月18日のカリフォルニア州ロス・アンジェルス、トルバドール(Troubadour )でのライブを収録してあるが、この正確な日時が判明していることは重要である。「Fit For A King」からのコピーである可能性もあるが、少なくとも「RI 3274」のプレスが1971年5月18日~1971年8月初頭までの間に行われたということの証となっているからである。プレスの詳細は下写真、右横の黄色文字の解説を参照してほしいが、この広告に掲載されたプレスはマトリックスにスクラッチド・アウトが無いCarnabyレーベル・タイプ(下写真の上段)のものだったと思われる。

←写真:CBM-⑤
Carole King / California Concert
上段はスタンプ・カバー、Carnabyレーベル、マトリックス RI3274 A/B となっている.
中段はスリック・タイプ、スリックには「Carnaby Records」の社名がプリントされているが、レーベルはContra Band Musicのレコード・マークがプリントされているタイプ。マトリックスのRI部分はスクラッチド・アウトされている。
下段はCBMのパイレート・マーク入りスリック。明らかに1974年以降のプレスである。
5月18日の録音であることから考え、8月19日の広告に掲載されたものはファースト・プレスであろう。となると上段のマトリックスにスクラッチド・アウトの無い、Carnabyレーベルのプレスがそうであったと思われる。
CBM-② Cat Stevence - "Catnip" マトリックス:RI 3275 A/B (→CBM-②)

←写真:詳細 → CBM-②
上段:ブルー・カラー盤は直刷りカバー
下段:レコード・マークがプリントされたスリック・タイプは黒盤で、マトリックスの「RI」がスクラッチド・アウトされている。つまりリイシュー盤にあたる。
他に、次の「Young Man’s Fancy」の写真中段にあるようなイエロー地にレッドでプリントされたレーベルなども確認されている。
このタイトル「Catnip」は複数のブートレッガーによってプレスされ、多数のバリエーションが見つかっている。オリジナルはマトリックスが手書きではなく、機械による刻印で「CLS 42471 A/B」と打ってあるもの。収録内容は諸説あるが、1970年11月30日から12月1日に行われたNY、Gaslight Cafe でのライブが有力であるようだ。この他にもWCF盤が出ており、タイトルからだけではどのブートレッガーによるものだったかは断定が難しいところだが、前述の「California Concert - RI 3274 A/B」から考えて、連番となっているこの「RI 3275 A/B」の可能性は高いであろう。

←写真:上段はブルー・カラー盤
詳細 → CBM-①
このブートレッグはいくつものバリエーションが見つかっている。
ブルー・カラー盤は直刷りカバーだったのに対し、写真中段のブラック盤はフロントにスリックが貼られておりバック・カバーは印刷となっている。ディスク・レーベルはイエロー地にレッド印刷だが、複写のようで印刷は劣っている。
写真下段はライト・ブルー印刷のスリック。バックには何も印刷は無い。このプレスは上記2枚とはマトリックスが異なり、「WEC」から始まり、筆跡の異なる「RI-3245-A2/B2」が書かれている。これは上記プレス盤からディスク・コピーされており、音質が劣っている。
収録内容は1971年2月1日、Los Angeles Music Centerにおけるライブ・コンサートの録音だが、オリジナルはRubber Dubber 盤の「I'm Happy That Y'all Came Down」という2枚組ブートレッグで、それよりディスク・コピーしたもの。「Young Man's Fancy 」というタイトルのブートレッグは他にもあるが、他のものは2枚組であることから考えると、この広告に掲載された「Young Man's Fancy 」はこのCBM-①盤であろう。マトリックス「RI 3245」は「California Concert」の「RI 3274 」よりも若い番号であり、2月1日のライブということを考えると、この広告に載ったものがファースト・プレスであったどうかは微妙なところで、既にリイシュー・プレス盤であったかもしれない。
CBM-⑥ James Taylor and Carole King -"A King And Two James" (3LP, BOX)
マトリックス:RI-3272 A1/ RI3272B / RI3273A / RI-3273-B / RI3274A / RI3274B

←写真上段は3枚組BOXセット
BOXフロント・スリックとディスク・レーベル、そしてインサートにもCanaby Recordsの名がプリントされている。
写真下段は、James Taylorのライブ、2枚組のみでプレスされたリイシュー盤でタイトルは「James Taylor In Disneyland」となった。
マトリックスのRIはスクラッチド・アウトされている。
このタイトルに関しては容易に判断ができる。広告にあるように、このタイトルで3枚組LPという仕様であれば、このブートレッグしかないからだ。黒のBOXには3枚のLPと写真や曲目などがプリントされたインサートが入っている。おそらくブートレッグの歴史上初めてのBOXタイプであろう。ディスク・レーベルにはタイトル・曲目が印刷されているが、さらにインサートが付属しており、当時のブートレッグとしてはかなり豪華であったと言える。収録内容は、最初の2枚にJames Taylorの1971年3月21日に行われたAnaheim Convention Centerでのライブが収録されているのだが、やはりオリジナルであるRubber Dubber盤の「Isn't It Nice To Be Home Again」(2LP)からのコピーである。3枚目はCBM-⑤の「Carole King / California Concert 」が入っている。同時期に西海岸では最初の2枚のJames Taylorのライブが「Taylor Made」というタイトルで、前述の「Fir For A King」と同じブートレッガーによってプレスされた。
その後、「Carole King / California Concert」 は上記の通り数回のリイシューがあった。一方James Taylorのライブは同じスタンパーで一度しかリイシューされていない。それが写真上、下段の「James Taylor In Disneyland」というタイトルの2枚組ブートレッグであった。

←写真上段:Bang09
カバーはオリジナルのBangla Records盤(Bang02)を再現したスタンプとなっているが、収録内容は「Harrison, Dylan, Starr / The Greatest Show On Earth (Bang01)」からのディスク・コピーである。
写真中段:Bang10
ディスクはBang09と同じものだが、カバーがスリック・タイプとなった。
写真下段:Bang11
カバーは上記Bang10と同じスリックだが、バックには曲目等ミメオグラフ印刷されている。ここで使用されてディスク・レーベルは「Don’t Pass Me By」DPB04~DPB08のデザインと似ており同時期に制作されたものであろう。
上の写真の3枚とも、既にlivedoor-Blogへリストしてあるので参照してほしい。③のDaily Press紙1971年9月3日の掲載広告にあるタイトルであるが、注目すべきはその広告に「Newest Hottest Record Album!」(「新着ホヤホヤのレコード!」とでも訳すべきか)という文言が付いていることである。写真上の上段のタイプと中段のタイプのどちらが先であったか厳密にはわからないが、CBMは 8月1日のコンサートを収録したSHARE Records盤(Bang01)とBangla Records盤(Bang02)の両方を手に入れ、Bang09においてはBangla Records盤のスタンプ・カバーを再現し、内容は「Harrison, Dylan, Starr / The Greatest Show On Earth (Bang01)」からのディスク・コピーし収録、このレコードを制作したのである。そして、おそらくはこの広告が掲載された9月3日の直前に入荷し、こうした表現となったのであろう。
(注:この広告掲載のタイトルがCBM盤ではなく、Bang02そのものが入荷していたと考えられなくも無いのだが、この点については、その可能性が極めて低いということを「確たる証拠(その2)」で説明の予定である。)
このセクションでは1971年の8月と9月にDaily Press紙に掲載されたブートレッグの広告とそれらのタイトルの検証を行った。掲載広告にある合計5つのタイトルはCBMによるタイトルと推察できるが、少なくとも3タイトルは、他のブートレッグとは考えられないので間違いないと断定できる。
また、既にこの頃、CBMはトレード・マークのレコード・マークをスリックやレーベルに使用していたということになる。そしてCarnabyという社名を頻繁に名乗っていた時期と言える。
そしてもう一つの重要ポイントは、「RI3274」のプレスが1971年5月~1971年8月初頭までには行われたことと、少なくとも広告掲載の1971年8月19日までに「RI 3245 / 3272 / 3273 / 3274 / 3275」が時系列で並んで発売されており、3272~3275までは、ほぼ同時期にプレスされたと言える。
この続編「確たる証拠(その2)」に入る前に、次のセクションでは、再三再四にわたり登場している「RI」で始まるナンバーのレコードについて説明する、それはメリーランド州ボルチモアにあったレコード・プラント「Recordings Incorporated」でプレスされたものと判明しており、初期のCBMブートレッグ解明に大いに関係する。
(ところで、私がこの記事を見つけた時、多少の驚きはあったものの、同時に納得することもできた。すぐに思い出したのは以前読んだ、OC weeklyに掲載されたWizardoへのインタビューの内容だった。(参照→Wizardo最初のブートレッグ パート1)最初に彼と友人のラリーがブートレッグ販売することを決めた時、彼らはラリーの母親の経営する若い女性向きの洋服店でブートレッグを売ろうと考えたらしい。オレンジ・カウンティのスワップ・ミートにしてもそうだが、初期のブートレッグ販売は、通常のレコード・ショップで行うにはリスクがあったのかもしれない)