
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Stories 6 (ストーリーズ 6)
How did "CBM" get its start? (CBMはいかにして誕生したか?)
Stories 6 -7 セクション7 Location Recording Service (ロケーション・レコーディング・サービス)
1960年代より、カリフォルニア州バーバンクに Location Recording Service(LRS)というレーベルがあった、地域に根差したレーベルで、地元のジャズやクラシック、合唱といったレコードをリリースしてきた。1970年代初頭にはレコーディングスタジオとなりミキシングやマスタリングの運営を1990年代後半まで行ってきた。
まずは下の写真をご覧いただきたい。
次の写真のレコード6枚はすべてLRSからリリースされた正規のレコードであるが、アーティストとタイトルに同じものはない。(なお、写真左側にタイトルとレコード・ナンバーのみ書いたが、教会でのコーラス、地元のハイスクールやアマチュア・バンドなどによるものが多いのでアーティスト名は割愛した)
上段
左:Christmas Concert 1964(LRS2488)
右:Christmas Greetings 1964 (LRS2484)
中段
左:Christmas At Acalanes 1964 (LRS2491)
右:JUBILEE ALBUM (1964 - 2116)
下段
左:Elijar (LRSV - CST - 4688)
右:"PASS IT ON"(LRSV - CST - 4523)

最初に気づくことは、 上・中・下段の左右のレコードカバーが同じものを使用していることがお分かりいただけるだろう。次に左側のみの上・中・下段をみると、すべてプリントされているフォントが Old English Text なのである。
よくシリーズもののレコードなどにもみられるが、LRSレーベルのレコードは、多数の同じデザインのジャケットを制作し、そのカバーに、後からアーティスト名やタイトルなどをプリントしていく方法をとっている。そして印刷文字のフォントには、なぜか Old English Text が使うことが多いのだ。
次に下の写真をご覧いただきたい。下の3枚のアルバムもすべてLRSから発売されたものである。

↑写真上:左から CANADA COLLEGE (LRSV-CST-4729) / The Ministry Of Music (LRSV-ST-4637) / THE RICHARD HANSEN CHORAL MUSIC FESTIVAL 1987(LRS-RT-6675) なお、左下段は拡大写真「DECEMBER 1971」とある、写真の一番右側はバック・カバー。
Shea The Good Old Days に使われたカバーはまさしくこれらと同一のものだ。そして Shea The Good Old Days にはLRSが頻繁にフォントに使用していたOld English Textを使用している。
またバック・カバー写真からこれらのジャケットの作りそのものがすべて同一のもので、タイトル等の印刷のみが異なっていることがわかる。
そして、LRSの上記3タイトルを見ると、このカバーは少なくとも1971年頃から1987年に及ぶまで使用され続けてきたことも分かる。
では、次の写真をご覧いただきたい。この2枚もLRSからリリースされたものである。

←写真
どちらも WILDWOOD MUSIC CAMP 1974 という同じタイトルだが演奏者、及び収録内容は異なっている。
左:LRS-RT-6060
右:LRS-RT-6073
これらも、1974年にLRSよりリリースされたものである。この写真こそがGet Back To Torontoに使われた写真であり、若干のカバーを作る際での加工に差はあるものの、Get Back To Torontoはこのカバー写真を利用して作られたことに間違いない。
さらに興味深いことは、どちらも印刷はブルーなのである。つまり GTRO2 のカラー・カバーはこのカバーに使用するためのオリジナル写真を独自編集し制作したものと考えられる。
なぜブートレッガーは Shea The Good Old Days や Get Back To TorontonoのカバーにLRSのカバーや加工前の写真を使用することができたのだろうか?
実は正規盤のリリースにおいても、似た現象は起こっていた。
今度は下記レコードを見ていただきたい。

←写真 「Fapardokly / Fapardokly」
オリジナル盤は1967年にLRSが制作したカバーと同一のものを使用しリリースされた。
1980年代以降、なぜかヨーロッパで注目を集め別カバーで再発されたりした。1995年に、ついにドイツのレーベルからオリジナル・カバー・デザインによる復刻CD盤が発売となった。左の写真は2022年には、やはりヨーロッパで再発となった復刻カバー・デザインのLP。
1967年にFapardoklyというカリフォルニア州を拠点に活動していたバンドがリリースした、バンド名と同じ「Fapardokly」というアルバムがある。このアルバムは「Fapardokly」自身によるUIPというレーベルから発売されたのだが、カバー・デザインはこのセクションの冒頭で紹介したLRSの下段2枚のカバーとまったく同一なのである。当時このアルバムはヒットせず廃盤となった。しばらくの間、陽の目を見ることは無かった。しかし1980年代以降このバンドはヨーロッパ中心に注目を浴びるようになり、 「Fapardokly」は別カバーで再発となった。そして1995年にはドイツのレーベルよりオリジナル・カバー・デザインのCDが復刻され、さらには2022年にLPの復刻盤も発売された。
おそらく1967年当時、「Fapardokly」はLRS側から一定量の既成カバーを購入したのだと思われる。つまりコスト削減のためにオリジナル・カバー・デザインのものを制作せず、既成デザインのカバーを安価で手に入れ、アーティスト名やタイトルをプリントし、リリースしたと考えられる。
私は、当初 Get Back To Toronto や Shea The Good Old days のブートレッガーも同じように(カバーを購入)したと考えた。
しかしながら、Get Back To Torontoのほうは1974年にLRSから正規リリースされたものとは若干編集に違いが認められる。つまりオリジナル写真を使用し、誰かが別編集をした可能性がある。いったいどのようなプロセスでGet Back To Torontoのカバーは作られたのか?という疑問が残った。
その後、しばらくして全く異なる件を調べていた時、私の推察は吹っ飛んでしまった。
思わぬところから事実が出てきて、新しい展開を迎えるのである。次のセクションではその新しい事実を深堀してみたい。
