ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

Stories 6  (ストーリーズ 6)   

How did "CBM" get its start? (CBMはいかにして誕生したか?)

Stories 6₋12  セクション 12           Mimeograph of "Don't Pass Me By"

                                                                                                       (ミメオグラフ印刷された CBM盤「Don't Pass Me By」)


 セクション11においてはShea the Good Old Days(SHGO1 / 2 / 3 / 4)とGET BACK TO TORONTO(GTRO1 ~ GTRO8)に共通項が多いこと、そしてSHGO4では初期のCBM盤にみられるミメオグラフ印刷がカバー表面になされており、CBMとの関係性を示唆している。

 さらにセクション11の最後ではいくつかのミメオグラフ印刷されているCBM盤を取り上げたが、最もバリエーションの豊富なタイトル「Don't Pass Me By」では5種類のミメオグラフ印刷が確認されていた。

 それら「Don't Pass Me By」のミメオグラフ印刷はTypeⅠ~Ⅴまでに分類し「Review21」へまとめをアップしたので、livedoor-Blogの(DPB01DPB07)のリストと併せて参照いただきたい。(→Reviews 21

 これらのブートレッグ・カバー表面のミメオグラフ印刷は珍しく、特徴をもった印刷である。SHGO4の印刷も他の印刷されたものと同一の手法で行われたものであり、SHGO4のものだけ別のブートレッガーが行った印刷とは考えられない。

↑写真左:TypeⅤ(DPB06)のミメオグラフ印刷、写真右は(SHGO4)の印刷。実はSHGO4)の印刷だけ数字のフォントが異なり、別のタイプ・ライターを使用した可能性が高い。しかしこの2つの印刷には「CONTABAND」という社名が入っているという共通点もあり、インクの色などからすると同一の条件下で行われた印刷に思える。

 「Don't pass Me by」のミメオグラフ印刷されたすべてのプレス、そしてGeorge Harrison、Jimi Hendorix、Neil Youngのプレスは明らかにCBMのプレスである。それはディスク・レーベルの形状から明らかに東海岸でのプレスであることがわかることと、同じスタンパーによるCBM名義のプレスも見つかっているからだ。

 では唯一、西海岸のワデル・プラントでプレスされたSHGO4のカバー上のミメオグラフ印刷は、いつ、どうやってCBMが印刷したのだろうか?

 そこでミメオグラフ印刷されたカバーが、いつ頃に制作されたものであるかを知る必要があるのだが、そもそも「Don't Pass Me Byのプレス時期」を明確にする必要性がある。

 「Don't Pass Me By」は1972年の発売というのが通説となっているなぜ「Don't Pass Me By」は1972年の発売と考えられているのだろうか? これに関し、いろいろ調べたのだが、実は明確な答えは無かった。

 実際、1972年としている海外のウェブ・サイト等においても具体的なエビデンスを示しているところは無い。

 ただ、日本において「Don't pass Me by」が過去にどのような紹介をされてきたかを検証していくと、確かに1972年頃から出回ったということがわかっている。

 1972年のミュージック・ライフ9月号のあるレコード・ショップ広告には新着ブートレッグとして「Don't Pass Me By」が掲載された。そして1973年11月号の音楽専科にはそのレビュー記事が掲載されており、確かに当時のファンにとっては「Don't Pass Me By」は1972年から出回ったブートレッグという印象を強く持っているのかもしれない。

 その後、70年代から80年代にかけて、「Don't Pass Me By」はほとんどのブートレッグを紹介する本に掲載されてきたポピュラーなブートレッグであった。そしてその紹介のされ方をみると興味深いことがわかる。

 「Don't Pass Me By」が紹介された雑誌記事や書籍をみると、すべて、Side 1の1曲目が「ジェスロ・タルの曲」と書かれているのである。(それは前述の音楽専科1973年11月号、及びビートルズ事典、そしてビートルズ・カタログ、ビートルズ・ディスコグラフィー、80年代に入ってビートルズ海賊盤事典において、すべてそうである)

←写真左:ミュージック・ライフ1972年9月号、某レコード・ショップ広告に「NEW BOOTLEGS」「The Beatles Don'tPass Me By(2枚組)」とある

←写真左:左側は1973年11月号の音楽専科、おそらく日本で初めての「Don’t Pass Me By」のレビュー記事。A面1曲目は曲目不詳とある。写真右はそのおよそ1年後に発売された「ビートルズ事典」。ここでは「ナッシング・イズ・イージー」と書かれている。さらに1977年に発売された「ビートルズ・ディスクグラフィー」も同様の記載である。

 だがこのケース、3冊とも同一の著者であるので、最初の「Don't Pass Me By」以降、アップ・デートしていなかった可能性もある。

そこで興味深いのは(←)写真左のビートルズ・カタログの記載である。この本は1970年代の中頃に発売され、別の著者によるものである。「Don't Pass Me By」の他にシングルLPで発売された「Complete Christmas Collection」と「AS Sweet As You Are」も掲載されている。そして「Complete Christmas Collection」には「CBM盤ではA面1曲目がジェスロ・タル」という記載がなされている。つまりこの時期においてもSide1 マトリックスが「CBM-2A」のタイプが使われていた。

↑写真上:カバーにミメオグラフ印刷があるタイプを含むDPB01~09まではすべてこのタイプの組み合わせマトリックス。

↓写真下:Side1の1曲目がジェスロ・タルが収録されているタイプはDPB10~12でしか見られない組み合わせマトリックス。

つまりは、70年代に出回った「Don't Pass Me By 」はSide 1のマトリックスが「CBM-2A」のタイプ、DPB10~12が主流であったと考えられ、DPB01~09にみられる「CBM2A2」ではなかった。

 ではジェスロ・タルのNothing Is Easyが入っていないDPB01~09はいつプレスされたものか?「CBM-2A」のタイプのDPB10~12の前であろうか、それとも後であろうか?

 まず、後である可能性は極めて低い。もしもDPB01~09のプレスが1972年から73年のプレスであるDPB10~12より後だとすると、これらのプレスは以前よりもっと紹介され、「ビートルズ海賊盤事典」などにも掲載されていたはずである、その上、1974年以降のDPB15~17までのプレスと時期が重なってしまうからである。

 逆にDPB10~12より前だとどうだろうか?つまり1971年というブートレッグの歴史から言えば初期にあたる時期であったらどうだろうか。 当時、それらがバージニア州のノーフォーク近辺でしか出回らなかったとしたら、西海岸にも、ましてや日本にも入ってこなかったはずであり、この可能性は大いにあり得る。

 「Don't Pass Me By 」のもう一つ重要なポイントは、「RI 3316」というナンバーである。DPB01から08までのリストを見ていただければわかるが、ミメオグラフ印刷されたTypeⅠからⅤまでを含む、それらの仕様にはマトリックス、及びレーベル、スリック等に「3316」というナンバーは無い

 livedoor-BlogでリストしたDPB09において「RI 3316」がディスク・レーベル上に初登場し、DPB12においてはDisc 2のマトリックスに書き加えられる形で登場した。

←写真上段右:DPB09のディスク・レーベルで初めて「RI 3316」のナンバーがプリントされた。

写真上段左:DPB12のディスク・レーベル。DPB09のレーベルとは「CBM」ロゴの大きさが異なるだけだが、時期的にはこちらの方が後であろう。スリックはブルー印刷となり、Side 1のマトリックスは「CBM-A2」となった。

写真下段:DPB12のSide 3 / 4のマトリックスには「RI 3316 C/D」が書き加えられている。

 「RI 3316」が書き加えられたマトリックスは、元の同じマザーから新たに制作されたものだ。単純に考えれば、当然書き加えられたものの方が後である。

つまり少なくともDPB12はDPB09よりも後のプレスであるはず

 また補足すると、DPB13及び14はSide 2のマトリックスにも「3316B」と付け加えられたナンバーがある。ということは少なくともこのマトリックスがDPB01~09よりも前にプレスされることは物理的にあり得ない。そういった意味ではDPB12もDPB10~12の後と考えるのが妥当だが、DPB09において既にディスク・レーベルに「RI 3316」がプリントされていることから、DPB12がDPB10~12と別プラントにおいてほぼ、同時期か、若干早期にプレスされたとも考えられなくはない。

 ただいずれにせよ、この「Don't Pass Me By 」の重要なポイントはRIで始まるナンバーが最初からマトリックスには使用されなかったことである。というのも、CBMによる他のタイトルではファースト・プレスからRIで始まるナンバーがマトリックスに書かれていることも珍しくはないからだ。

 次より、連続して2つのセクションでRI-のナンバーでプレスされたCBMのブートレッグを取り上げ、さらにそこから「Don't Pass Me By」が最初にプレスされた時期を探っていく。