ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

                   Stories   6  (ストーリーズ 6)   

How did "CBM" get its start?  (CBMはいかにして誕生したか?)

Stories 6 -1 セクション1     Introduction (イントロダクション)


 ブートレッグの原点となったボブ・ディランの「Great White Wonder」は1969年西海岸で製作されたものだったが、1970年初頭に出現したビートルズ初のブートレッグ「KUM BACK」と「O.P.D.」はどちらも東海岸で作られたものだった。しかし、発売中止となったアルバム「Get Back」に関する音源をもとにしたブートレッグはその後すぐに西海岸においても製造された。それは1970年2月から3月頃に出回ったとされる「Get Back(Lemon)」と、そのあとを追うようにリリースされた「Get Back To Toronto」であった。

参照→ 最初に出現したビートルズ・ブートレッグ『KUM BACK』と『O.P.D.』について

 今回のストーリーズは「CBMはいかにして誕生したか?」というタイトルなのだが、この話は「Get Back(Lemon)」と「Get Back To Toronto」から始まる。不思議に思われるだろうが、最後まで読んでいただけると幸いである。



Stories 6 -2 セクション2   「Get Back(Lemon)」and「Get Back To Toronto」


 Lemon Recordsによる「Get Back」はフロント・カバーにインサート(スリック)が付いた初めてのブートレッグとして1970年2月から3月頃に西海岸に出現した。それまでのブートレッグは、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ビートルズともにスタンプ・カバーか、あるいは何もプリントされていないホワイト・カバーに入ったものがほとんどだった。

 内容は発売中止になった「Get Back」の音源をリアル・ステレオで収録していたが、東海岸で出回ったステレオ「KUM BACK」よりはかなり音質が劣っていて、曲間にある話し声などの音量レベルを故意に上げているなどの、あまり好ましいとは言えない編集がなされていた。このLemon Records盤は初期のブートレッグとしてはかなりポピュラーなものとなった。その一つの理由にその後も何度かリイシューされ続けたことと、後にTMOQがこのインサートを縮小コピーし「Get Back(BGB-111)」のリイシュー盤のカバーに使用したことなどが理由にあげられるだろう。 Lemon Recordsが使用したスタンパーは後にDittolinoに引き継がれ「Get Back Sessions」というタイトルでリプレスされるが、最終的にはWizardoグループの手にわたり70年代後半に再度リプレスされた。

← 写真上段  左:Get Back(Lemon, GET08)

中央:Get Back To Toronto(1st Stamped Cover, GTRO1) 右:Get Back To Toronto(Color  Cover, GTRO2)

写真下段

左:Get Back (GET39) はLemon Records盤から複写したスリックを使用したが、プレスはTMOQのマトリックス「BGB 111 A/B-RI 」だった。

中央:Get Back Sessions(GET09/10)はDittolonoによるLemon Records盤のオリジナル・スタンパーを使用したリイシュー・プレス

右:Get Back To Toronto(WCF盤)オリジナルのGet Back To Torontoからは多数のコピー盤が生まれた。

 Lemon Recordsの「Get Back」からすぐに別ブートレッガーによる「Get Back To Toronto」が同じ西海岸で製作された。「Get Back To Toronto」はLemon Recordsの「Get Back」と比べると格段に音質が良かったが、収録された曲数がやや少ないのが難点であった。「Get Back To Toronto」は数回にわたり、カバーを替えながら同一のオリジナルスタンパーでプレスされた形跡がある。しかし1971年以降、このスタンパーでリプレスされることはなかった。

  これら2つのブートレッグは1970年4月2日のローリング・ストーン誌にレビューされた。「Get Back」に関しては「Lemon」という記載は記事中に無いものの、「Across The Universe」を収録しているという内容からLemon盤のことを指しているとみて間違いない。(詳細→GTRO3)

  またGet Back To Torontoに関して補足すると、オリジナル盤が西海岸で作られた後、コピー盤がイギリスのロンドンで出回ったようだ。イギリスで発行されていたDisc and Music Echo誌の1970年5月30日号にレビューが掲載された。ここに掲載された「GET BACK TO TORONTO」はオリジナルのスタンプカバー盤にあったようにHigh-Quality Stereoの文字と「See you in Toronto John and Yoko」という一文がフロントカバーにプリントされているB/C Records盤のことを言っていると思われる。(ただ記事内では「with love from John and Yoko」と誤植が認められるが・・・。)(参照→GTRO9)

← 写真

左:1970年4月2日(No.55)のRolling Stone Magazine、「Record Notes」というレコード・レビュー記事にLemon盤「Get Back」「Get back To Toronto」そして「Come Back」(スペルは原文のまま)、「Let It Be」といったブートレッグ・タイトルが紹介されている。(詳細→GTRO3


右:イギリスで発行されていた「Disc and Music Echo」という週刊ポピュラー音楽雑誌の1970年5月30日に発行された号。そこには「BOOTLEG BEATLES!」というタイトルで「Get back To Toronto」が紹介されたが、どうも文面よりB-C Records盤のことを書いたようであるが、結果的に「Get back To Toronto」のオリジナル1stプレスは「High-Quality Stereo」の文字がある(GTRO1)の可能性が高いことを示している。(詳細→GTRO9

 このように当時のメディア記事より「Get Back(Lemon)」と「Get Back To Toronto」が同時期に発売されたということが客観的に判明しているが、実はこの2枚のアルバムには、ほぼ同時期に制作されたという事実を証明する、もう一つの証拠が存在する。

マトリックスをみるとレコードナンバーの後にS-で始まるナンバーがある。

「Get Back(Lemon)」では S-2131/2 、「Get Back To Toronto」では S-2142/3 である。

   このようにS-で始まるナンバーはちょくちょく西海岸で作られたブートレッグに認められることを知っているコレクターも多いと思われる。このS-ナンバーが何を意味しているか次のセクションで明らかにしてみたい。